映像製作・演出 佐藤斗久枝

 映像教材「介護のしごとの道しるべ」は、記録映画をつくるスタッフでつくった映像教材です。
 私は、高齢者介護の問題をテーマにいくつもの記録映画をつくってきた、工藤充プロデューサー、羽田澄子監督の映画づくりに、スタッフとして参加していました。その中で、高齢社会がますます進み、介護を担う人材がますます必要とされる、という現状に対して、何か役に立つ作品をつくることはできないか、という思いを持つようになりました。特に関心を持ったいたのが、障がいを持った高齢者の「尊厳」を支え「自立」をサポートする専門的な介護とはどんなものか、そしてそれは、どのようにして実現できるのか、ということでした。
 そんな中で、以前にも映画で取材をした岐阜県にある総合ケアセンター・サンビレッジ(運営: 社会福祉法人 新生会)で、高齢者介護サービスの現場を深く見る機会を得て、そこで起こっていることを記録映画の手法を活かして、つぶさに捉えることが、勉強材料になるのではないか、と思い至りました。
 全国には先進的な介護を実践する現場が数多くあり、サンビレッジもそのひとつと言われていますが、今回ここに特化して取材をしたのは、「介護の専門性」を追求する姿勢への共感とともに、スタッフを育てること、特にスタッフ全体のレベルアップということに力を入れている、という点に関心を持ったからです。論より証拠、たくさんのスタッフが、実に楽しそうに働いている姿に、心引かれました。
 もうひとつ、サンビレッジが2012(平成24)年に新設した特別養護老人ホームを立ち上げ時から取材できる、という好機に恵まれたことも、この映像教材づくりにトライしようと決心した理由です。新規立ち上げに伴うさまざまな課題に対して、試行錯誤を重ねながら、一歩一歩進んでいくケアの現場の中にこそ、何か皆の役に立つヒントが見つかるのではないか、と考えたからです。
 今回は映画ではなく、より直接的に介護の仕事に関わる方々、勉強する方々に活用してほしい、という思いで、映像教材というかたちでまとめました。しかし、「教材」といっても、必ずしも初めから「正解」がわかっていたわけではありません。この映像教材づくりもまた、試行錯誤の連続。「ケアの基本は観察」と言われますが、「アセスメント」と「チームケア」というキーワードを頼りに、ケアの現場を観察し、スタッフの皆さんにお話を聞き、ときには利用者の方々にも励まされながら、あれこれ考えては撮影を繰り返して、施設開設からの1年間を追いました。そして、いろいろな出来事の中から、特にヘルパー(介護職員/ケアワーカー)という職種に注目して、エッセンスをまとめたのが今回の教材です。
 付属の冊子は、映像を勉強材料として活用するための参考に、まずは映像に登場したスタッフの皆さんに、映像を見て自らの課題を振り返ってもらい、気づいたこと、考えたことをまとめました。また、映像の内容を補完するために、サンビレッジのケアについての基本的な考え方も付しました。
 難しいけれど興味のつきない、楽しい映像づくりでした。この映像と冊子を、よい介護を考え、実践するためのひとつの勉強材料として、お役に立てていただきたい、と願っております。